昨日お電話で、TV映像業界にHDDを貸し付けているという業者さんから、以下のような問い合わせがありました。
RAID-0設定のG-RAID miniシリーズHDDケースの中にHGST社製2.5インチHDD500GBが2台搭載されていて、パソコンからは見かけ上1000GB(約1TB)として認識されていた外付けストレージ(データ記憶媒体)が認識されなくなり、HDDを取り出して調べたところ、1/2台のHDDから「カチン・カチン・カチン」と異音がしているが、ここから映像データや映像テロップデータが取り出せるか?
修理人の回答はもちろん即答で「データ復旧不可」です。
お問い合わせいただいた業者さんは、以前まで秋葉原にあった“もの凄い技術を持った韓国人”が経営していたデータ復旧屋さんが、大手のボッタクリデータ復旧業者から入り口のドアを叩かれたり嫌がらせを受けていた後に移転してなくなってしまって困っているとの事でした。
この業者さんが仰る“もの凄い技術を持った韓国人”という方は、2年前(2015年)に2.5インチSATA500GBの複数プラッターのHDDの壊れたヘッドを交換して、料金6万円でデータ復旧をしてくれたそうです。
HDDのヘッド交換だけでデータ復旧が本当に出来るのか?
多くの方が経験していないので知らなくて当たり前ですが、私修理人が18歳から約30年間TEACの国内外の工場勤務時代を含め延べ3万台以上の記憶媒体や周辺機器装置、パソコンの完成品(故障品を含む)を扱ってきましたが、HDDのヘッド交換やプラッター乗せ替えでデータが取り出せたのは、2.5インチも3.5インチもIDEインターフェイス時代の表示容量80GBまでの頃です。これはもう10年以上前に生産されていた古いHDDです。
また、HDDヘッドが単品で電気的に故障することもありますが、多くの故障の場合HDDの落下衝撃や、データ書き込み中に電源が切れてしまうなど、ヘッドが退避していない状態でプラッターの回転が止まり、ヘッドがプラッターに対してディスクブレーキのように挟み込んでしまう「ヘッド吸着」という不良も有ります。
何れにしても、例え古い10年以上前のIDE接続HDDであっても、HDDのヘッド交換だけでデータが復旧できる確立は低かったですし、スピンドルモーターの回転不良品に対してはプラッターをスピンドルモータが回る躯体に乗せ替えて同時にヘッドも積み替えてもデータが復旧できる確立は低かったです。
つまり“もの凄い技術を持った韓国人”という方を知りませんが、修理人は「嘘をついて困っている人の足元を見る」とか、限りなく不可能に近い技術対応を正直に告げることなく「困っている人に無用な期待を持たせる」ことは技術では無いと考えているので、修理人の今までの経験と判断ではHDDのヘッド交換やプラッターのせ替え交換は、データ復旧作業にとって有効では無い。としています。
それでもどうしてもデータが取り出したい場合は?
修理人が信頼している知人の中には「ステマや詐欺行為を排除した真のビジネスモデルのコンサルティングをしている永江一石さん」や「医療分野において偽の情報を拡散する(自称)医療ジャーナリストらの不正確な情報に惑わされないよう実際に困っている患者様を守ろうと奮闘している桑満おさむさん」がいらっしゃいます。
データ復旧業界に限らず「不可能を可能かもしれない?」と惑わされる方々はたくさんいらっしゃるようですが、受け入れがたい真実を見極めることで、失敗経験は少なく出来ます。
どうしてもデータが取り出したくとも、修理人の私のところに来て「データ復旧不可」と私が判断すれば、そのデータ復旧は不可能です。
当店では、真実を告げられることが受け入れられない方からのご依頼は一切お受けいたしません。
他のデータ復旧業者の皆様へ
修理人が真実を書いてしまうからといっておそれる必要などありません。あなた方はあなた方の考える方法で、困っているお客様に真摯に向き合われたらよろしいのでは無いでしょうか?
当店で税抜き3万円でデータ復旧しているHDD容量500GB以下の記憶媒体が、他店様では安いか高いか? などという金額で技術者を判断する方は、お電話でお問い合わせいただいた時に、当店ではお断りしています。当店が一番大切にしているのはお客様と私修理人との相互の信頼関係です。修理人が信頼できない方からのご依頼もお断りしていますから、他店様のお仕事が無くなってしまうことは無いでしょう。
また、データ復旧に50万円とか100万円と見積もられるデータ復旧業者さんもいらっしゃるようですが、自信を持ってお客様に提示した御社独自の技術料金でしょうし、賃貸している会社の事務所家賃や雇っている技術者の人件費、googleやyahooなど検索サイトへの高額な広告費もあるでしょうから、私修理人は”ボッタクリ“などとは考えておりませんのでご安心下さいませ。
ただし、私修理人の考えでは、データ復旧業そのものが不要になる世の中を目指しておりますし、記憶媒体機器の技術進歩や冗長化技術の進歩にともない、実際にデータ復旧の依頼件数自体は長期的に見て減少傾向にあります。
パソコンのエンドユーザー対応技術者が考えなければならないこと
これから10年以内に、パソコンのエンドユーザーに必要とされる技術者が考えなければならないことは、データ復旧など真に必用とされる技術者は必ず残りますから、今まで携わってきた技術を活かし、経費を抑えた小規模独立店舗を自営で開業するなど、近い将来の展望について真剣に考えておく必要が有ります。
技術者の皆さん!足元ではなく前を見ましょうね!